フジテレビでの会見の考察

午後4時からスタートした会見が翌日の午前2時半ごろまでかかったので、長丁場の10時間の及んだ記者会見ですが、ちょうど午後4時から2時間ほど見た後に、午後10時頃から午前2時までは見ていたので、そのあたりの感想をまとめておきます。

フジテレビ記者会見 10時間超に 新社長に清水賢治氏 港浩一社長 嘉納修治氏 遠藤龍之介氏 金光修氏ら出席 | NHK | テレビ局 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250127/k10014704771000.html

すぐにでも youtube に全会見が上がりそうな勢いですが、NHKの一問一答があるので、これを参考にでもしてください。

会見の争点

見ている人によってそれぞれの立場があるので会見の味方が異なります。視点としては、ビジネス寄りにして「今後のフジテレビが存続し得るか?スポンサー会社は戻ってくるのか?戻れるのか?」で見ています。なので、具体的な性被害/性接待については別途中居問題としてでてくるだろうし、週刊誌等が追うでしょう。それはそれで必要なんだけど、株主のいる株式会社としてフジテレビは今後どうするのか?ということです。

問題となるのは、

  • スポンサーが一斉に降りてしまった責任を誰が取るのか?
  • フジテレビ自体を今後どうするのか?立て直すのか?
  • スポンサーが戻る余地があるのか?

ということです。明らかに第1回の閉鎖的な会見が良くなくて、その後のスポンサーが一斉に抜けたわけで、それをなんとか収拾しないと株主としてもスポンサー会社としても困るわけです。

会見の良かった点

先に会見の良かった点をあげていきましょう。実際のところ記者会見としては比較的良かった部類に入ると思うのです。一部の記者(望月記者など)の怒号や主張が長かったという意見もありますがそれを受けての記者会見ではあるし、長時間にわたってしまったのはひとりひとりの記者に必ず質問の機会が与えられていたという進行のためなので、仕方がないでしょう。逆に言えば、長時間にわたってしまったが、記者が質問をするという形式は確実に守れたと思われます。

  • 港前社長の退陣が決定していた
  • 清水新社長の新体制や第三者委員会の解説が明確であった
  • 日枝相談役に関しては、相談役として据えているだけで強烈な影響があるわけではない(まあ、多少はあるにせよ)

少なくとも株主への説明やスポンサー会社への説明のための材料は揃えていたような気がします。元凶が前社長の対応の杜撰さにあるので、これを払拭できるかわかりませんが少なくともフジテレビの社長と会長を退陣させることでそれの決着はできるでしょう。副会長が留任しているのは副会長の言葉が実に真摯であることからわかります。5人の会見でしたが、港前会長が一番駄目で、他の4人はそこそこ答えている感じでした。

フジ・メディアHDの社長の言葉は、たしかにフジテレビの株主会社なのでこういう言い方しかできませんよね。もう全面的に港前社長と周辺の役員、その下に連なるディレクターが不味いって話でもあります。

フジテレビの買収の恐れに関しては、フジ・メディアHDの社長の説明する通りメディア業務が50%を越えることを前提にHD自体が作られているそうなので「買収はあり得ない」と考えられます。買収されたときは、HDごと買収されることになるので、あの社長は必至で抵抗するでしょう。それがHDの役目でもあるのでそこは相談役ともども乗り込んでくると思われます。例の外国株主からの件は、そのあたりの事情が良く分かっていないのかもしれません。フジテレビの株を持ってはいるものの、番組内容や会社の態勢はHDが株主的にも優先度が高いのではねのけるかなと。

あと、フジテレビで会見を最後まで生放送(10分遅れではありますが)したのは、フジテレビの制作担当だそうです。ちょくちょく入っている音声なしの状態も、その遅延の間に消しているので流石報道制作部(多分)というといころですね。これはバラエティだとしても同じで音声やカメラの切り替えで放送事故になりそうなものを瞬時に切り替える技術のたまものです。

個人的にはもっと音声がなくなると思っていたのですが、かなりピンポイントで削られているだけでした。おそらく編成担当の部署に役員がいて色々指示することが無かったんじゃないかなと思われます。単なる記者会見ではなくて、自社の社員向けでもあるということも含めてできるだけ流すという方針にしたのは良かったです。所謂、のり弁になるのを危惧したのですが、それは無かった。

会見の良くなかった点

この会見のよく無かった点としては港前社長の不誠実な回答に付きます。おそらく、実際のところ該当の女性からの報告(女性の同僚や医師)をかなり分かっていないのが丸見えで、当時ながらわからないところがあったにせよ、そのあたりを謝罪しないと前に進まないのですが。そこは第1回目の会見を閉鎖でやったところもあって「さもありなん」という体ですね。

おそらく前社長の保身が今回の騒動を大きくしてしまった(発端は中居問題にせよ)のではないかと考えられます。

非常に気になる(印象がよくない)のは、

  • 女性が事実を知られたくないまま復帰したいと望んだので、それに応じて隠した。中居番組も続けた。
  • 今回の件は非常に「特殊」であった。できれば女性本人に会って謝りたい。

の2点です。

「女性が事実を知られたくないまま~」が言い訳になっているに過ぎません。少なくとも株主やスポンサーからは会社としての危機にあっているのに、当時の女性の気持ちのせいにしている前社長を信用することはできません。むしろ、当時の状態として女性の意図を間違って汲み取ってしまって、コンプライアンス的にも人権的にも誤った行為をしてしまった、と謝罪したほうが受けがよいです。そうじゃないと、単なる女性社員の一存で社長が振り回されている感じがするし、先導できていません。まあ、実際そういう訳で馘なので決着は一応ついているのですが、本人が分かっているかどうかが分かりません。

実際のところは第三者委員会の調査を待つところですが、性被害(セッティングに突っ込んだの女性本人の意思だとしても、性被害とみられるような行為をされるのはそれは犯罪ですよね)にあった人にとってその直後はその事実を否定したり自分を過度に責めたりすることはよくあることです。心理的にその事実を無くしたいという思いがあるので、向き合うので「事実が知られないまま復帰」を望むわけですが、実際そういうのでは心的被害が残ります。想像ではありますが、前社長が何度も「特殊」なというのは、かなり深刻な状態だったと思われます。本人が強烈に隠蔽と復帰を望むと同時に、おそらく自殺を図ったのかもしれません。自殺すると一遍に情報が洩れますからね。ちょっとしたセクシャルハラスメントとは状況が違うわけです。副会長が言う通り、フジテレビ内でもちょくちょくセクハラやパワハラでコンプライアンス部への報告もあったのでしょう。でも、それは自殺レベルではなかったかと思われます。そういう意味で実際に「特殊」だったのでは?と想像ができます。

で、午後1時過ぎの前社長の言葉ですが、既に退職していますか?という記者の質問に対して「在籍しています」と答えています。何度も「直接会って謝りたい」と言っていますが、現在も社員であれば直接会うのは容易ですよね。会わない、あるいは会えないのは何か理由があるのでしょうか?女性に拒否されている?変な勘ぐりをされてしまう状況です。

勘ではありますが、被害女性は躁鬱症状態になっているのかなと思います。これ個人の特定とかそういう範囲になってしまうのですが(実は、今の私が被害女性が誰だったかを詳しく調べていません。うちの奥さんからパリ五輪に見に行っていた、と聞いたぐらいで世の中としては特定されているようなのですが、あえて調べていません)、躁鬱症の場合は本人の言葉を医師が鵜呑みにすることはまずないんですよね。なので、性被害をあった直後に「復帰したい」とかいう言葉を鵜呑みにすることはないのです。あと本職のカウンセリングだとそういう個人的な話を会社に伝えることもないんですよね。おそらく、フジテレビ内の産業医レベルかもしれません。個人的なカウンセリングを受けたほうが良いかと。

余談

ハッキリ言って、細野不二彦著「電波の城」を思わせます。というか「電波の城」の連載自体がそういうテレビ業界の裏話をベースに作った漫画なので、そのあたりは多少の誇張はあるにせよ当時のテレビ業界の雰囲気がこんな感じだったわけです。なので「女子アナ」というジャンルが、いわゆるコンパニオン役を担わされていた時代背景もあります。

そこが一般企業の認識とずれて居るところに、前社長の言葉のずれぐあいが集約されていますね。

もうひとつ、日枝相談役の存在は河合隼雄著「中空構造 日本の深層」を読むと詳しく書いてあります。いわゆる日本神話から続く、日本の権力構造がほぼ空位である天皇というもので存在して、権威ではあるが権力がないという中空構造を保っている歴史的経緯があるのです。これは、外国の株主には理解しがたい現象かもしれませんね。

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