都知事選は結果を見る通り、小池氏が全得票の半数弱を取る結果となった。
いろいろな後付けの感想がツイッター(X)に流れている訳だが、実はひとつの実験として、行動経済学の視点から実地の数値から都知事選を予測することをやっていた。
結果の資料
東京都知事選挙2024 立候補者紹介・選挙速報(7月7日投票) https://www3.nhk.or.jp/senkyo2/shutoken/20336/skh54664.html
あわせて開票所別も
東京都議会議員補欠選挙2024 立候補者紹介・選挙速報(7月7日投票) https://www3.nhk.or.jp/senkyo2/shutoken/20337/
東京都知事選挙 NHK出口調査結果|NHK 首都圏のニュース https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240707/1000106259.html
支持層割合、とくに無党派層の割合を調べる
都知事選 【結果】2024 現職の小池百合子氏が3回目の当選 石丸伸二氏 蓮舫氏らを抑える | NHK | 選挙 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240707/k10014502181000.html
年代別用
私の予想
投票日の1週間前位に投票数を予想している。
私としては、
- 組織長(首長)の三選は禁止したい派なので、非小池知事を希望
- 板橋区というのもあり地元当選の蓮舫氏を支持
ということで、蓮舫陣営寄りの観察になりがちなので、これを補正するためにきちんと事前のデータだけを利用することにした。感情的にはツイッター(X)での様相に左右されがちなのだけど、これは安野氏や暇空氏支持でも同じことだろう。どうしてもエコーチェンバーになりがちになってします。このために、行動経済学における「見たものからしかデータを得られない」というバイアスがかかってしまう。また、どうしても期待を込めてしまうために、ちょっとでも希望が持てそうな事実を重く取り上げてしまう。いわゆる、損失バイアスをかけた状態になってしまうのだ。
投票率は 55% 程度、全体で600万票と予想する。各党の支持率は、東京都の比例代表からとってきている(ここは、前回の出口調査から類するするべきであった。無支持層が少なすぎる)。
上段のものが、比例代表などから想定したもの。各党のまとめ方は、組織票(公明と共産)が集まりやすいものと、分散しやすい層(自民、立憲)とわかれている。実は、都内なので都民ファーストの率が高いのであるが、国政に都民ファーストが入っていないので票が読めなかった。また、2020年の選挙でのれいわの票の行先が不明であった。
得票予想としてはとしては、
- 小池氏 250万票 41% 程度
- 蓮舫氏 125万票 20%程度
となっている。
実際のところは、
- 小池氏 290万票 43%程度
- 蓮舫氏 128万票 19%程度
となるので、ほぼこれで合ってる。石丸氏が得票数を伸ばした(1/4の支持を得ている)ことは予想できなかったし、田母神氏がこれほど低い得票率であったこと、泡沫候補がトータルでも5%未満であることは予想し得なかったので、ちょっと偶然の具合も強いのだが、最初の予想はあっている。
予測時点で、蓮舫氏を当選させるシミュレーションとしては、
- 自民票が、半分以下にとどまること
- 立憲、共産が票を強くまとめること
- 蓮舫氏が無党派層の割合をもう少しあげること
であったが、それでも160万票ぐらいにしか届かない。このためボーダーラインとしては、150万票から200万票ぐらいと考えていたわけだが、黄色のセルをどう工夫しても蓮舫氏の勝ち目は薄かったところである。
それでも期待バイアス(損失バイアスの反対)を掛けて、蓮舫氏の当選を工夫しようとするのだが…結果的には、当初の予測値に近い形になっている。
無慈悲な統計のほうがあたり率が高いというのは、やっぱり行動経済学ですね、という具合になってしまう。
支持政党別を補正して予測し直す
先の予測では、比例代表から支持政党の割合を決めたのだが、無支持層の割合が低すぎる(9.4%)になっている。今回の出口調査を見ると 48% である。
これを使って予測し直してみよう。
得票率は61%となるので、前回より得票率が高い。有効投票数は690万票と100万票ぐらい増えている。
これをベースにして計算し直すと、
- 小池氏 290万票 42.1%
- 蓮舫氏 106万票 15.4%
ということで、これは概ね合っている。維新、れいわは資料がないので按分し、都民ファーストはほとんどを小池氏にいれる計算になる。
実際の割合はこれになるが、統計上2桁位で計算すればよいので、1%,2%である、れいわは誤差として無視してよいだろう(前回の山本太郎候補の66万票 10% 程度、が、れいわ新選組以外からの票が多かったことを示している)。
行動経済学の損失/期待バイアスはシステム1を無視すれば、バイアスを避けられる
この実験は、予測値をきちんとした実測値(実測値自体の精度もあるのだが)を使えば、心理学的にシステム1(損失バイアス)を回避して、うまくシステム2の予測ができるだろうか?という実証実験である。
結論から言えば、実測値を忠実に扱えば、システム1に引っ張られることを避けることができる。さらに言えば、実測値をシステム2の思考で忠実に扱えば、かなり近い形で未来の予測が可能であろう、ということになる。まあ、N=1の実験結果でしかないので、都知事選については過去のデータに遡って予測を繰り返してみるとよいだろう。
応用としては、ITプロジェクトの進捗予測や不具合予測に利用可能である。
プロジェクトマネジメントにおける直感はシステム1に引っ張られる可能性もあるが、同時に専門職による経験と勘は内部的にはシステム2の思考を利用している可能性も高く重要である。傍目からみると(自分でさえ)その思考手順がシステム1なのかシステム2なのかを知ることはできない。このため、バイアスが存在するかどうかが判断し辛いのだが、直感と実測からの予測を見比べることで、ずれが生じていれば、それは「システム1に引っ張られているかもしれない」という懸念を持つことが重要だろう。こうすると、経験と勘を捨てずに、精度の高い予測を行うことが可能と考えられる。
ただし、この予測値においては石丸氏の170万票(24%)は予測できていない。無党派層の2割(日経新聞より)からだけでは、24%という高い得票率は想定し得ない。私の予想では、石丸氏、田母神氏がギリギリ供託金の60万票をまぬがれるかどうか、と思っていたのだが、実際のところでは田母神氏は保守票をまとめきれず 27万票しか得られていない。
個人的には、安野氏や暇空氏に注目するところ(賛同ではないけれど)ではあったのだが、2%前後という低い割合になったのは意外なところだった。2%というと、学校の学年で2,3人ぐらいの支持なわけで、クラスで徒党を組むことも難しい。その位のマイノリティということになる。マイノリティにはマイノリティによる戦い方があるので、ここではゲリラ戦ですよね :)
参考資料
都知事選2024予想(Excel)