ソフトウェア開発委託基本契約書の不備により、未払い200万円の被害を受ける – Moonmile Solutions Blog
未払金の続きは内容証明で – Moonmile Solutions Blog
未払金の結末 – Moonmile Solutions Blog
のまとめです。
■ソフトウェア開発委託基本契約書の見直し
まずは、未払いなりのトラブルが発生しないように、ソフトウェア開発委託基本契約書の見直しをします。今回の落ち度は、善意に基づき「トラブルが発生した場合の損害賠償の上限を、委託金とする」という条件を入れたのですが、これを外します。ただし、条件がない場合には青天井になって、相手の悪意により(瑕疵とか難癖とかがあるので)こちらの被害が甚大になってしまうので、ある程度の上限が必要です。
- 支払いの遅延に関しては、年18%とする。
- 支払いを遅延した場合は、委託金の50%を損害賠償金として支払う。
金額がもっと多い場合(1000万円とか)は、別途損害金の見直しは必要でしょう。個別契約書で変更するのがよいと思います。支払の遅延による年利は銀行からの借入の利率よりも高くしておきます。そうしないと、簡単に遅延されてしまいますからね。あと、損害賠償金を明記しておきます。これは、弁護士費用、裁判費用も込みで上乗せしておくという形ですね。ただし、自転車操業的にお金をまわしている場合は、手元のキャッシュが危うくなるので、この損害賠償金では危ないパターンがあります。もともと、遅延自体がリスクなので、リスク管理的に抑制効果として条項を加えておきます。
逆に、当方の瑕疵によるプロジェクト遅延に対しても損害賠償金を支払う義務が生じます。これは、プロジェクトの遅延をしないように努めること、遅延しそうになったら事前に相手に通知すること(損害賠償金を請求されないように)を行い、事前の合意を取ります。たいていの場合、お客マター(要件定義の遅れとか、要求の肥大化、お客の隠し玉などなど)が多いので、これでクリアできるでしょう。まあ、外注している場合は「できなかった」リスクもあるので、会社としてはフォローすべきかも。フリーランスでやる限りでは、これは大丈夫かと。
■相手の状況を調べる
ホームページがあれば、それで調べるし、社長の名前があれば必ず google で検索をします。あと、2チャンネルで噂になった詐欺師ではないかを調べます。
ただし、与信管理が必要なので、
- TDB企業サーチ | 帝国データバンク[TDB] の利用
- 与信管理なら株式会社東京商工リサーチ | TSR の利用
- 興信所の利用(だいたい 5万円ぐらい)
を事前にやっておきます。帝国データバンクと東京商工リサーチは5,000円ぐらいで済みます。資本金と主要株主、取締役、従業員数が出るので、これを相手の営業なり担当なりの言葉とすり合わせればOKです。このあたりの方法は、孫子の兵法に詳しいです。
■実際に遅延が起こったら(難癖による支払遅延も含む)
で、実際にお客が支払わないよ、という自体が起こったときにはどうするかというと、
- 下請法の範囲(資本金1千万1円以上)の場合は、下請かけこみ寺 全取協会ホームページ下請かけこみ寺事業 に連絡。これは、子会社の場合は、親会社の資本金が対象になります。
- 下請法の範囲外の場合は、支払督促 裁判所|支払督促 を利用します。
今回は、金額が比較的大きいことと、私が個人的に弁護士と知り合いということもあって、弁護士費用を出すことにしましたが(まあ、それ以外の方法を知らなかったというのもあるのですが)、一応、上記2つの方法があります。
下請法の場合は、勧告扱いで実際の取り立てはどうなのかわからないのですが、ホームページに会社名が晒されるし、信用にキズが付くので、支払ってくれるはずです。あと、資本金がそれなりに多ければ100万程度なら大丈夫でしょう。まあ、大抵は会社間ってことになりますね。
支払督促の場合は、裁判所が相手の会社の給与差押えなどをしてくれます。継続して取引がある会社だと困るんでしょうが、未払いが発生するような会社と取引は続けたくないわけで(下請メーカーだと別なんでしょうが)、フリーランスならばもっと優良なお客を掴みましょう(自戒をこめて)。裁判所が強制執行をしてくれるので楽です。そのための税金ですからね。支払督促状自体は、裁判所にPDFがあるし、自分が書ける範囲です。裁判所に出向く必要もありません(郵送でOKだそうです)。値段は5,000円位(通常の訴訟の半額)なので、10万円規模ならば使ってもいいかも。
まあ、どちらにせよ、きっちりと「契約書」が残っていないと駄目なので、メールベースなりPDFなりで、金額が書いてあるものが必要です。これは忘れずに。
あと、商取引的に「手形を切って貰う」という方法もあります。手形を使うと、相手の当座預金からの引き落としができるし、手形自体を信用金庫などに売ることもでるし、それなりに融通が利くのですが、IT業界で手形で取引しているところはないですよね?小切手とか手形を使うと、未払い=即銀行の焦げ付きになるわけで、大抵は期限までに支払ってくれるはずですが、簿記を勉強すると手形の未払金の例題が多いので、まあこのパターンも支払ってもらえないパターン(相手が倒産するパターンですが)が多いのかなと。モノ(在庫)が関わってくる工場とか流通とかはそのパターンが多いかも。
■弁護士費用はどのくらいなの?
弁護士にもよるのでしょうが、経験上、
- 手付金が10万円程度
- 日当が3万位(これは法律で決まっている)+諸経費
- 成功報酬が10%ぐらい(これは弁護士によって異なる)
な感じでしょうか。弁護士も「仕事」でやっているので、それなりの金額が必要です。少額の取引の場合には弁護士費用だけで赤字になってしまうので、頼むことはできなでしょうが。逆に言えば、15万円程度で弁護士を雇うことができるってことです。悪徳弁護士もいるので注意は必要ですが(そういう場合には、弁護士会に連絡すれば、弁護士資格を剥奪することも可能です)、高学歴の方をこき使うというのも面白いかと。まあ、みなさん「先生」つけて余分のですが、私は「さん」づけです。つーか、「先生」ってのは蔑称ですから。
それぞれの地方には弁護士会があるので、そこに連絡するのもありかと。あと、弁護士費用は分割にしてくれるパターンも多いので、最初は相談だけというのもありです。
■泣き寝入りしない
先のブログのコメントやメールなどで頂いたのですが、結構、未払いの例は多いようです。ひどいですよね。私の場合、2,3日寝込んでしまったのは、同時に例の8.1事件があった訳でまた別件も含めてなので(実質的には、トリプルパンチを喰らった状態で、なにがなにやら)ちょっと特殊な環境ではありますが、「泣き寝入り」ないことが重要です。
ビジネス上「はじめてのお客さん」というのは避けられません。新規顧客開拓は必要だし、引き合いでビジネスをやるのは、交渉術のひとつですよね。なので、ガードを緩く見せて、実はガードを固く保つ(あるいは、ノーガード戦法?死にそうですがw)のが良いかと。
なので、フリーランスの場合トラブルに巻き込まれるのは確率的なものです。ブラックな会社に就職しているのと違うので(いや、法務的にトラブルってのもあるし、ブラックじゃなくてもトラブルはあるんですが)、お客を選ぶというのも重要ですよね。逆に「お客に選ばせる」という戦法もあります。
私としては、今回は「泣き寝入り」はしたくなかったので「いい加減にしろ」状態で、あれこれと手を打ってみました。探してみれば、それなりに手はあるわけで、最初は全額諦めなければいけない、という話を何度も聞かされたのですが、結果的には全額支払わせたわけですよね。まあ、偶然的な要素と将棋的な手法(意図的に使いました)が功を奏したと思う訳ですが、逆に言えば、それなりの手を使えば「泣き寝入り」をする必要はありません。「泣き寝入り」を勧める意見を聞く必要もありません。邪魔です。ええ、自分が「正しいことをやっている」のであれば、被害を蒙って泣き寝入りすることはあり得ませんってことです。まあ、そのあたりは「正義」かどうかは別として、高い税金を払っていることだし、役人に動いてもらいましょう、ってことで。
すみません、3年も前の記事にコメントするのはどうかとも思ったのですが、今後のためにもなると思いましたのでコメントさせていただきます。
(ちなみにわたくしは弁護士などではなく、世間の人よりちょっと法律に詳しいただの人です。以下コメント内容は『ちゃんとした』弁護士の方に確認いただいてください。)
今回の件ですが、報酬額250万円で、すでにプログラム開発を終え、納入済み(検収も完了)ということですので、その時点であなたのほうの債務は果たしており、対価として報酬を受け取る債権を保有している状況です。
で、それと「損害賠償」とはまったく別枠です。
つまり、報酬として250万円を受け取る権利を有しているうえで、別途、相手方の責に帰すべき事由により被った損害の賠償を請求でき、その金額の上限が報酬と同額=250万円ということになります。
よって受け取れる最大金額は報酬+損害金=報酬の2倍ということになります。
「相手方の責に帰すべき事由により被った損害」は、今回の件で言うと支払遅延に伴う損害ですので、弁護士費用やその他交渉に必要となった実費、逸失利益、支払遅延に伴って発生した精神的損害、その他が対象(候補)となります。(もちろんどこまで算入を認めるかは和解や裁判などで決定されることになります。)
上記については比較的常識の範囲だと思われますが、担当された弁護士の方がよっぽどへぼかったのか、それとも上記を主張できない何らかの事情があったのか…。
この件に関しては「上記を主張」したくない「何らかの事情」があったので、そのあたりは不問にしました。賠償金の上限については、「IT業界の通例」というところと「遅延によって被害を被ったかどうかが詳らかではない」という感じです。
この手の支払い遅延は結構多いらしいのですが、「支払催促」を使うのが一番手軽みたいです。裁判所経由なので、相手方との仕事に支障がでますが、たいていの場合支払遅延になるような相手とは手を切るのがベターなので、1万円ほど払って催促した上で縁を切る(さっさと次の仕事に移る)ってのよさそうです。